研究内容

 本分野では、癌・免疫疾患モデル動物や神経ウイルス遺伝子発現動物、抗病性動物の開発を通じて各種疾患のメカニズムを解明し,それらの新しい予防・治療法の開発に貢献することを目標としています。主に発生工学的手法を用いてトランスジェニックマウスやノックアウトマウスを作製し,それらに見られる病態を詳細に解析することによって新規の疾患モデルを創っています。その他,家畜やペットの病気にも注目し,疾患モデルとしての可能性を探っています。

1. アトピー性皮膚炎モデル動物
 アトピー性皮膚炎はアトピー素因を有する人に見られる,かゆみをともない長期間持続する湿疹です。特に小児において発症頻度が高く問題となっていますが,その原因遺伝子の詳細には不明な点が多いです。本研究室では核内IκBタンパク質であるMAIL/IκBζをノックアウトしたマウスに認められるアトピー性皮膚炎様の病態を解析し、その発症機構を解明するための研究を進めています。


図1.核内IκBタンパク質MAILをノックアウトしたマウスのアトピー性皮膚炎様の病態。HE染色した皮膚組織に表皮の肥厚と炎症性の細胞浸潤が認められる。


2. 遺伝性乳癌モデル動物
 遺伝性乳癌原因遺伝子BRCA2の産物であるBRCA2タンパク質は,組換え酵素Rad51をDNA二重鎖切断部位に運んで損傷を修復させます。BRCA2の機能低下は遺伝子変異の蓄積を通じて発癌リスクを上昇させます。私たちの研究室ではBRCA2の機能をマウスやイヌで解析したり同遺伝子のイヌにおける多型を解析して新しい疾患モデルの確立を目指しています。


図2.BRCA2タンパク質は組換え酵素Rad51をDNA二本鎖切断部位に運んで損傷を修復させる。写真は,放射線照射した細胞の核でDNA損傷部位にRad51がフォーカスを形成している様子を示す。

 

3.  小脳形成不全モデル動物
 仮性狂犬病ウイルス(ブタヘルペスウイルス1)の転写調節因子を発現するマウスは小脳形成不全を呈します。本研究室では、このマウスの病態解析により、新規の小脳形成不全モデル動物を確立すること、ヘルペスウイルスの新しい病理発生メカニズムを示すこと目指しています。


図3. 仮性狂犬病ウイルスの転写調節因子IE180を発現するトランスジェニックマウス (TgIE180) は小脳形成不全を呈する。


図4. TgIE180小脳形成不全モデルにおいて IE180 (赤) は小脳のプルキンエ細胞 (青) やグリア細胞 (緑) の核で発現していた。IE180 発現細胞は未熟でしばしば変性しており、その結果として小脳の組織構築異常をもたらしている。

4. ウイルス感染症抵抗性動物
 仮性狂犬病ウイルス感染に抵抗する動物の開発を目的として、ウイルス遺伝子の転写抑制因子やウイルスの細胞への吸着を妨げる吸着阻害分子の開発とその分子育種法への応用を行っています。