北海道大学 遺伝子病制御研究所

研究成果

IL-6ファミリーサイトカインの機能重複性と特異性について詳しく説明

研究成果のポイント

シグナル伝達分子、gp130を共有するIL-6ファミリーサイトカインの機能の重複性と特異性について自己免疫疾患を例に詳しく説明した。さらに、IL-6依存性の炎症誘導機構「炎症アンプ」や新たな神経—免疫連関のコンセプト「ゲートウェイ反射」に関しても最新の知見の説明を加えた。

研究成果の概要

IL-6は、1986年に我が国でクローニングされた多機能性サイトカインである。IL-6が結合する受容体IL-6Raと細胞内シグナルを伝達するgp130がそれぞれ1988年と1990年にクローニングされ、その後、サイトカインの中でも1、2を争う数多くの研究がなされてきた。とくに、抗IL-6Ra抗体や抗IL-6抗体が現在、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療薬として世界的に臨床応用され、IL-6は基礎免疫の研究が実臨床に結びついた好例である。
一方、1992年には、IL-6のシグナル伝達分子であるgp130が、LIFおよびOSMの受容体複合体に存在することが報告され、gp130受容体を共有する「IL-6ファミリーサイトカイン」の存在が確立された。現在までに、IL-6、IL-11、IL-27、IL-35、IL-39、LIF、OSM、CT-1、CNTF、CLCF1の10サイトカインが、gp130を共有するIL-6ファミリーとして知られている(下図参照)。これらのIL-6ファミリーメンバーは、gp130受容体を共有していることから、自己免疫疾患発症への役割などで、別のサイトカインが同一の機能を持つ「重複性」が認められる一方で、同一の事象に対して、逆の機能を発揮するなど、それぞれのサイトカインが、「特異性」を持つことも知られている。今回、これらサイトカインの機能の重複性と特異性の解説、それらの分子機構の考察を含めて、IL-6ファミリーサイトカインの構造、シグナル伝達の様式や遺伝子欠損マウスの表現型などをまとめて詳しく説明した。また、IL-6依存性の炎症誘導機構「炎症アンプ」や新たな神経—免疫連関のコンセプト「ゲートウェイ反射」に関しても最新の知見の説明を加えた。

図:IL-6ファミリーサイトカインとそれらの受容体構成
10種のIL-6ファミリーサイトカインは、シグナル伝達分子gp130を共有する。CLCF1、IL-27、IL-35、IL-39は2つのサブユニットから形成されるサイトカインである。