【研究成果】腫瘍の多様性と可塑性における癌幹細胞の働きに関する総説論文を発表

幹細胞生物学分野の近藤亨教授は、腫瘍の多様性と可塑性について、癌幹細胞の知見を基に考察した総説論文を発表しました。

研究成果の概要

腫瘍は癌細胞と多様な正常細胞から構成されていることが病理観察から明らかにされていましたが、腫瘍発生に関わる様々な遺伝子・エピジェネテック変異の同定、癌幹細胞を頂点とした癌細胞ヒエラルキーの存在とその可塑性の発見、腫瘍微小環境における癌(幹)細胞と正常細胞のコミュニケーションに関わる研究、最新の細胞・組織培養法や解析技術の開発により、腫瘍が考えられていた以上に複雑な組織を構成していることが明らかにされ始めています。更に、この腫瘍の複雑さが治療抵抗性に関与していると推測され、その解明が癌根治に必要不可欠と考えられています。
本総説論文では、脳腫瘍幹細胞をモデルとして癌幹細胞の起源細胞と遺伝子変異の組み合わせによる癌幹細胞の多様性や可塑性を論じるとともに、癌幹細胞とその周辺細胞間のコミュニケーションに関わる最新の知見や単一細胞解析による癌幹細胞の性状解析の有効性と欠点について論じ、現時点で可能な癌幹細胞を標的とした新規治療法を生み出す方法論を利用した最新の研究成果についても言及しました。

本総説論文は、2021年1月14日(木)公開のSeminars in Cancer Biology誌のテーマ課題”Cancer Cell Heterogeneity and Plasticity: From Molecular Understanding to Therapeutic Targeting”(Guest editors: Prof. Dean G. Tang, Prof. Toru Kondo)にオンライン掲載されました。

2021年01月18日|お知らせ:2020年, 研究成果