【研究成果】"効く" がん細胞ワクチンのメカニズムを解明 ~ほぼ全ての患者さんに適用可能ながん細胞ワクチン開発に貢献する可能性~(免疫生物分野)
北海道大学遺伝子病制御研究所の和田はるか准教授、清野研一郎教授、同大学大学院医学院博士課程の梶原ナビール氏らの研究グループは、がん細胞ワクチンはほとんど効かないとされる中、“効く”がん細胞ワクチンの、効果を示すメカニズムを明らかにすることに成功しました。
がん細胞そのものを用いるがん細胞ワクチン療法は、がん細胞を得ることができれば、理論上ほぼ全ての患者さんに適用できる治療法となりうることから、大変期待されていました。しかし残念ながら、ごく一部を除きほとんどの例で有効性が見られませんでした。またごく一部の効く場合でも、なぜ効くのかが不明なままであり、近年ではほとんど顧みられなくなっていました。

研究グループは、マウスのがん細胞株では非常に高いワクチン効果を示すものが複数存在することに着目し、ワクチン効果を示さないがん細胞株との比較解析を行うことで、ワクチンが効くメカニズムの解明に取り組みました。
その結果、ワクチン効果のあるがん細胞株では、自然免疫系に関係する複数の遺伝子の発現が高くなっていることが分かりました。そこで、発現の高い特定の3つの遺伝子をワクチン効果のないがん細胞株に導入してワクチン療法を行うと、治療効果が得られるようになりました。また、ワクチン効果の発揮にはインターフェロン-γ産生B細胞が重要であることも判明しました。
今回得られた研究成果は、今後のがん細胞ワクチンの開発に貢献するものと期待されます。
なお、本研究成果は、2023年5月22日(月)公開のOncoImmunology誌に掲載されました。
https://doi.org/10.1080/2162402X.2023.2213132
本研究は、学術研究助成基金助成金(#22K19449、#18K07286)、遺伝子病制御研究所 共同利用・共同研究拠点、北海道大学フォトエキサイトニックプロジェクト、GSKジャパン研究助成、特別研究員奨励費(#22J21076)等の支援のもと実施されました。