「癌と免疫におけるシグナル伝達系の解析」という観点から生体防御系における細胞応答の分子制御機構の解明を目指す

当研究室は、平成19年5月1日からスタートした新しい研究室です。 所属する遺伝子病制御研究所の改修工事も終わり、平成20年4月からは新らたな装いで当研究室がス タートしました。 遺伝子病制御研究所には大きく病因、病態、疾患制御と3つ研究 部門にわかれて各々の分野が存在しております。 当研究室は、その内の病因研究部門に所属します。


言うまでもなく、生体には生きていくための多くの巧妙なしくみがあると同時に、すでに死ぬまでの生体のプログラムが遺伝子には刻まれています。 たとえば、ウイルスや細菌など、様々な病原体が我々の周りには存在します。 それでも我々が生きていくことができます。 また、遺伝子の異常が起こることで、がんをはじめとする様々な疾患や病態が引き起こされることが知られていますが、これを防ぐ仕組みがあることもわかってきました。 このような我々が生きていく上で備わっている防御機構を明らかにすることが我々の研究課題であります。

当研究室での主要な研究の方向性としましては、まさにその研究室の名の通り、感染やがんに対する生体防御システムについて分子レベルでそのメカニズムを解析することです。 これまでに多くの研究が重ねられ、様々な病原体に対する感染防御機構、あるいはがん化のメカニズムについて少しずつ明らかにされてきました。 しかしながら、現在まさに全国的に麻疹の大流行で大学が閉鎖される事態やインフルエンザの流行などが問題になっている一方では、多くのがん患者が今こうしているときにも命を失わざるを得ない運命に会っている状況は否定できません。 少しでもこのような患者を救うことに役立つような基礎研究を目指しております。

生体防御系
—感染防御やがん抑制—
に関わる
シグナル伝達経路の解析

私は、これまでに東京大学大学院医学系研究科 免疫学講座(谷口維紹教授)においてインターフェロン(IFN)という自然免疫系において代表的なサイトカインのシグナル伝達系およびIFN調節因子(IRF: IFN-regulatory factor)の免疫系における役割について研究を進めてきました (ここにその一部を要約しました)。 これらの研究を通して、冒頭で述べたような、「生体が生きていくため備わっている巧妙な仕組み」が1つ1つの分子が働き、多くのネットワークを形成することによって担われているということの不思議にふれることができました。 と同時に、一方では短い期間ではありましたが、臨床の場で、病を抱える多くの患者の苦しみに直面してきました。 当時26歳で会った自分と同じ年齢の胃がんの患者を担当したことがありますが、すでに進行期であり、治療の術はありませんでした。 このような悔やまれる経験を原動力とし、生体防御の分子メカニズムに関する研究を進展させることで、少しでも治療の分子基盤を見出すことにつながればと考えております。

上で述べた巧妙な生体の仕組みの1つに、生体に侵入してきた病原体をいち早く察知するセンサーが備わっていることが近年の研究によってわかってきました。 病原体認識受容体(PRRs; pattern recognition receptors)というものです()。 病原体の一部の分子パターンを認識する受容体で、TLRs (Toll-like receptors)をはじめ、RIG-I (retinoic acid-inducible gene-IやMDA5(melanoma differentiation antigen 5)などがその代表的なものとして報告されています。 これらは、病原体由来の核酸 (RNAやDNA)や細胞壁、鞭毛などの構成成分の分子パターンを認識するとされています。 これらのPRRsによるsensingは、これ以降に引き起こされる免疫応答の最初の重要なスイッチであると考えられ、多くの研究者によって注目され、急速に展開している分野です。 また最近は、このようなPRRsを介する受容体下流のシグナルの異常が感染防御の異常や自己免疫疾患の発症や病態と関連していることも報告されてきました。

当研究室では、外因的あるいは内因的な生体の恒常性を犯すストレス、具体的には、感染やがんなどに対し、first defenseとしてまず『認識』するプロセスに着目し、新たな認識受容体の検索を行い、その下流のシグナル伝達経路の解析を進めることで、感染症や自己免疫疾患、癌といった難治性疾患の分子病態の解明を目指したいと考えております。 その結果、冒頭でも述べたように、将来的には異分野との共同研究により新技術を積極的に取り入れた治療のストラテジーの基盤作りに貢献できれば、と考えております。


当研究室では、以下の2つを大きなモットーとして掲げております。

  1. 世界に発信できる研究を展開する。
  2. 社会に貢献できるサイエンスを目指す。

理学部や医学部などの学部と問わず、様々なbackgroundをもった学生や研究員を求めています。 積極的に異分野からの研究者を受け入れ、お互い異なった知識や背景をもった研究者が交流することで得られる独創的な研究推進への相乗効果を取り入れ、これを生かした形で『人材育成』も行っていきたいと考えております。

是非、北海道という北の大地において
世界を動かすような発見をしよう!

LET’S MOVE
THE WORLD
BY OUR HANDS!!!