International Society for Gravitational Physiology 

The 44th Annual Meeting of International Society for Gravitational Physiology; ISGP2025

ISGP2025 札幌

(開催目的と意義)

人類がこれまで築き上げた文明は、我々人間に対して様々な恩恵をもたらしてきました。現代文明は、人間を取り巻く環境にも変化を与え、多種多様な環境が人体の生理機能に与える影響を明らかにし、それに対する対策を考案しなければならない時代に突入しております。科学技術の発展は、宇宙空間という無重量環境に代表される人類史上未経験の特殊な環境の利用をも我々人類にもたらしています。

国際宇宙ステーションの本格運用が始まり、宇宙飛行士の宇宙滞在が長期化しています。また火星への有人飛行も計画されており、宇宙飛行士の健康管理の面でも、重力または無重力が生体に及ぼす影響の詳細を把握し、こうした影響を除去する方策を確立する必要に迫られています。こうした宇宙医学研究は、地球上における老化、運動不足、生活習慣病に伴う生体の変化を軽減する処方にも応用可能であることが確認されています。従いまして、弊会の研究成果に対する学術的意義はもちろんのこと、社会的貢献に対する期待も大きいものがあります。生体に対する非常にエネルギーの高い宇宙放射線の影響やその対策法の解明も強く望まれるところであります。さらには、ヒトの祖先は何だったのか解明する研究にも着手されています。魚類から哺乳類が進化したとすると、どのような機構で重力の影響を受けながら、身体機能等が適応したのか、ヒトを含む種の起源の解明を目指す研究も進行しています。近い将来の食糧不足も視野に、動物のみならず、植物の発育における重力の役割を追求する研究も本格的に始動しています。

弊会は国際生理学会 (International Union of Physiological Society: IUPS)の重力生理学部門より1973年に独立し、1994年に一回途切れたものの1979年に米国 New Orleansで第1回大会が開催されて以来、毎年北アメリカ、ヨーロッパまたはアジアにて学術大会を開催しています。日本での開催はこれまで、第8回大会 (東京: 1986年11月4〜8日、東京慈恵会医科大学 佐伯镹教授)、第21回大会 (名古屋: 2000年4月3〜8日、名古屋大学 間野忠明教授)、第27回大会 (大阪: 2006年4月23〜28日、大阪大学大学院 大平充宣教授)、第34回大会 (豊橋: 2013年6月23〜28日、豊橋創造大学 後藤勝正教授)、第40回大会 (名古屋: 2019年5月26〜31日、愛知医科大学 岩瀬敏教授)、そして2025年今回が6回目の開催となります。最近の開催地は、Lisbon (Portugal、 2022年)、Antwerp (Belgium、2023年)、Dubai (UAE、2024年)であり、それぞれEuropean Low Gravity Research Association (ELGRA)、European Space Agency (ESA)、Mohammed Bin Rashid Space Centre (MBRSC)などの宇宙機構との共催で実施されております。

総会員数は世界20カ国以上から約1,000名となっています。本学会大会は毎年開催されており、常に最新の研究成果について口頭またはポスター発表がなされています。また、最新のトピックスについてはシンポジウムやパネルディスカッションを通して、今後の研究の展開を議論することで、国際共同研究が容易に展開できるような体制が構築されています。さらに本学会はFrontiers in Physiologyとパートナーシップを締結しており、本学会終了後の年次Proceedingsの出版に加え、毎年2つのResearch Topicsを共催することで、重力の生物学的・生理学的影響に関する科学的知識の普及の促進に努めています。以上のように、弊会は予防医学および社会医学の臨床および基礎研究、ならびに今後の宇宙事業の発展に寄与するものと確信いたしております。