北海道大学遺伝子病制御研究所

研究成果

ショウジョウバエの睡眠誘引因子に由来する抗菌ペプチドを発見(生命分子機構分野)

睡眠を促すタンパク質 Nemuri から生じるペプチドが、薬剤耐性菌を含む幅広い微生物の増殖を阻止することを発見しました。このペプチドにより細菌内でリボソームの集まり方や動きが変化し、タンパク質合成が抑制されます。細菌内の「分子の集まり方」を狙う、新しい抗菌薬設計の可能性を示す成果です。


薬剤耐性菌が世界的な課題となる中、従来とは異なる仕組みで働く抗菌薬が求められています。本研究では、ショウジョウバエ由来の睡眠誘因因子 Nemuri から生じる複数の短いペプチドを同定し、これらが薬剤耐性菌を含む幅広い微生物の増殖を抑えることを発見しました。大腸菌や黄色ブドウ球菌では、同程度の濃度で増殖阻止に加え殺菌性も示しました。
これらのペプチド(Nemuri ペプチド)は、細菌膜に顕著な損傷を与えずに内部へ入り、RNA とリボソームが集まる領域に蓄積しました。さらに、 RNA とリボソーム表面に多点的に結合して、 リボソームが集まる領域の配置を変え、リボソームの動きを低下させるとともに、タンパク質合成が抑えられました。 一方、 昆虫・哺乳類培養細胞への毒性は低いことも分かりました。また、 Nemuriペプチドは、標的となるリボソームの特定の結合部位ではなく、リボソームの物理的な集合状態と動的活動を標的とする新たな抗菌作用様式を持っています。
本成果は基礎研究段階であり、今後は細菌感染動物モデルでの有効性、安全性、安定性、薬物動態、免疫原性および耐性化リスクなどを検証します。

研究代表者

筑波大学高等研究院(TIAR)国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)
戸田 浩史 特任助教・主任研究員

北海道大学遺伝子病制御研究所(生命分子機構分野)
野田 展生 教授


【論文名】Antimicrobial peptides derived from Nemuri induce ribosomal condensation to inhibit translation
(リボソーム凝縮を誘導して翻訳を阻害するNemuri由来抗菌ペプチド)
【掲載誌】Nature Communications
【DOI】10.1038/s41467-026-78960-5

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【図の説明】Nemuri 由来ペプチドで観察された分子メカニズムの概要
Nemuri 由来のアルギニン/グリシンに富む短鎖ペプチドは、顕著な細菌膜損傷を起こさず細菌内へ移行し、RNA やリボソーム表面の複数の箇所に結合する。これに伴い、リボソームの動的活性が失われ凝集し、タンパク質合成と細菌の増殖が抑えられる。